研究概要 |
1.Ce_xLa_<1-x>B_6の多重極秩序の可能性 Ce_xLa_<1-x>B_6のIV相の秩序変数についての知見を得るために一軸応力下の磁化測定を行った。その結果、x=0.75〜0.65のいずれの試料においても、IV相において顕著な磁気異方性が[100]方向の一軸応力によって誘起されることがわかった。また常磁性相(I相)からIV相への転移温度が[100]方向の磁場下で上昇する振舞いが得られた。これらの結果はIV相が異方的な多重極秩序相である可能性を示唆している。 2.URu_2Si_2の低温電子状態の解明 反強磁性状態の一軸応力依存性を中性子散乱実験によって調べ,4回対称性を低下させる歪みもしくは正方晶主軸を延ばす歪みに対して反強磁性が著しく増強される事を明らかにした.また,同実験を異なる加圧冷却条件で繰り返し,誘起反強磁性が圧力に対して履歴現象を示すことを明らかにした.このことから少なくとも低温高圧下においては,この物質の電子状態が磁性・非磁性2相の非平衡共存状態にあることがわかり,理論設定に対する条件を狭めることができた. 3.理論面での成果 Yb_4As_3で見出された磁場誘起ギャップについては、交替的ジャロシンスキー守谷相互作用によるとして理論を構築してきたが、これまでの解析はさらに低エネルギーの有効ハミルトニアンであるSine-Gordon理論を用いてきた.しかし、高温までの比熱を解析するには元のモデルを直接解析する必要があり、密度行列繰り込み群を用いて実行した、充填型スクッテルダイトで見られる金属絶縁体転移に関して、非クラマース二重項の縮退を結晶変形によってとく理論を構成した. フェルミ面のネスティングが有効でない場合は、遍歴電子磁性体でもヘリカル構造が出現する可能性を指摘した。ネスティングが有効な場合はスピン密度波(SDW)構造になる。この場合、秩序ベクトルとして同等なベクトルが複数存在する場合、かつ磁化の大きさが小さい場合、必ずmultiple SDW構造となることを示した。また秩序ベクトルが非整合の場合、必ず電荷密度波(CDW)を伴うこと、CDWの振幅には近藤効果が関与していることを示した。
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