研究概要 |
最近注目されている知的材料・構造システムという新領域では,従来とは異なる特殊な機能材料を構造材料に複合化するため,新たな製造プロセス,複合相の役割に適した界面設計,特に顕著に異なる材料同士を同時に機能させるための協調的な材料設計が必要となる.本研究では,そのような複雑な材料システムをできるだけ単純に実現するため,繊維状の相を複合化することにより多機能性を発現する構造材料の創製に関する研究,すなわち主に航空・宇宙構造用に開発されてきた複合材料を,これまでの常識的設計概念-剛体設計-に反して"動く",しかも"感じる"スマートな材料へと発展させることを試みた.その基盤となるコンセプトは「多機能性アクティブマテリアル」であり,その中心は,マトリクス材料中に偏在する強化繊維により発生する熱変形と,主にその動きを検知するためのセンサである.本研究の特徴は,構造材料のアクティブ化を実現するためにアクチュエータ材料を用いることなく構造材料にとってマイナス要因である熱変形を逆に有用な機能として利用したこと,および各々の材料システムに相応しい独自のセンサを開発したこと,などにある.具体的には以下の通りである.ベースとなる材料は軽量性を重視しアルミニウムとしたが,一部高温での動作を目的としてニッケルを用いた.その一方向の熱変形を可能にするため,それに比べ熱膨張率が低いCFRP, SiC繊維,ステンレス鋼繊維を部分的かつ一方向に複合化した.さらに,独自の方法により形状制御のためのセンサ機能や変形のための発熱機能を付与した.また,一つの発展形として,繊維長さの違いにより発生する熱変形を利用するアクティブ複合材料も有用であることを明らかにした.
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