研究課題/領域番号 |
11222201
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 康二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10107443)
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研究分担者 |
伴野 達也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (70189736)
藤原 毅夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90011113)
目良 裕 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40219960)
北島 正弘 東京大学, 金属材料技術研究所, (研究職)グループリーダー
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 電子励起 / 表面拡散 / Si-Cl系 / アモルファスカーボン / グラファイト / EL2 / アンチサイト欠陥 |
研究概要 |
走査トンネル顕微鏡(STM)の探針から適当なサンプルバイアスV_Sでトンネル電流注入(プローブ励起)すると、固体表面付近の特定電子準位へ(から)電子を選択的に注入する(引き抜く)ことができる。本年度は、従来からのSi-Cl吸着系に加え、このようなプローブ励起原子移動が起こりやすい可能性のあるカーボン物質と、GaAs中の欠陥について実験を行った結果、以下のことが分かった。 Si(111)-(7×7)表面上のCl:表面バンドの異方性に対応してプローブ励起効果が波束の伝播により電流注入点から広がることが分かった。 Si(001)-(2×1)表面上のCl:Cl拡散に起因する電流ゆらぎの測定から、拡散速度が注入電流に比例することが分かった。 ta-C膜の電子線照射結晶化:Si基板上にFCVA法で作成したtetrahedral amorphous Carbon膜を透過電子顕微鏡の電子線で照射すると結晶化が起こることを見出した。結晶化には原子はじき出しが必要なこと、原子拡散は電子線による加熱効果ではなく電子励起によって促進されているらしいことが分かった。 グラファイト照射欠陥のプローブ誘起原子移動:グラファイト結晶に400eVのAr^+イオンを照射して導入した欠陥をSTM観察すると、欠陥像が生成・消滅することを見出した。詳細な実験の結果、電界効果によってグラファイト表面の層間が引き伸ばされ、格子間原子が層間を動きやすくなるためであることが分かった。 GaAs中のAsアンチサイト(As_<Ga>)欠陥:低温成長によりAs_<Ga>欠陥を高密度に含むGaAsエピ膜を作成し、STMを用いて単一のAs_<Ga>欠陥の光吸収スペクトルを測定したところ、EL2の吸収スペクトルと同じものを得た。さらに90Kの低温で光照射すると準安定状態へ構造変化を起こすこと、また探針から伝導帯へ電子注入すると準安定状態から回復を起こすことを見出した。構造変化の励起スペクトルはEL2の光クウェンチのそれに一致し、このことから、長年論争があったEL2とAs_<Ga>欠陥の同一性が明らかになった。
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