研究課題/領域番号 |
11223202
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
下村 政嗣 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10136525)
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研究分担者 |
西川 雄大 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (40281836)
KARTHAUS Olaf 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (80261353)
居城 邦治 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (90221762)
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キーワード | パイ電子 / DNA / 鋳型 / 単分子膜 / アゾベンゼン / 会合 / 分子配向 / コヒーレント |
研究概要 |
分子が1、2あるいは3次元的に集積された物資系では、光物性のうえでその次元に固有の挙動が現れる。とくに分子の1次元および2次元集積構造には未知の光物性が隠されている。本研究では、生体のDNA構造形成からヒントを得て、分子間距離、配向など、種々の構造パラメーターを規定した分子集積系をつくり、そこで起こるコヒーレントな光励起と量子現象を検証し、より高次な分子集積構造に特有な新しいコヒーレント光化学特性を明らかにし、量子演算素子などの新しい分子機能素子への展開を探る。本研究の特色は、分子を1次元に配列させる方法として、DNA塩基配列における高次構造性を利用して、DNAを鋳型モデルとして種々の両親媒性核酸塩基からなる1次元配列を生み出すことにある。 多数の分子が1次元に集積された分子配列系を巨視的スケールにおいて構築し、長距離にわたる励起子の伝搬について調べた。すでに本研究者は、アゾベンゼン発色団が二分子膜中で二次元配列することで、パイ電子間の強い相互作用による吸収スペクトルの励起子分裂と励起子からの特異な蛍光発光が見られることを報告している。そこで、アルキル鎖内にアゾベンゼン発色団を持ち、親水部に核酸塩基を有する幾つかの両親媒性化合物を合成した。シトシンを親水部に持つC12AzoC5CytならびにC8AzoC10Cytのエタノール溶液中でアゾベンゼン発色団が孤立した状態では355nmに吸収極大を持つのに対し、相補的な塩基対を形成するグアノシンを含む水溶液上に形成される単分子膜では、それぞれ、370nmと300nmに吸収極大がシフトした。これらは、二分子膜中で観察された励起子分裂と同じ結果であり、それぞれ、傾いた分子配向(J会合)とカードパック型配向(H会合)によるものと考えられる。吸収スペクトルの励起子分裂は、ポリヌクレオチドであるpolyG水溶液状でも観察された。一方、純水上では安定な二次元分子集合体は形成されなかったことから、核酸高分子を鋳型として安定な一次元パイ電子配列系を作製することに成功した。
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