本年度では、サイズ及びモルフォロジーの異なる一連のポルフィリンデンドリマーを分子設計し、その発光特性を時間分解蛍光スペクトル測定及び蛍光偏光解消測定により調べた。その結果、3層28個の亜鉛ポルフィリンユニットが球状に配列されたデンドリマーでは、亜鉛ポルフィリン間の効率的なエネルギー移動により中心に高速で光エネルギーが伝達されるのに対して、一部の亜鉛ポルフィリンが欠損したデンドリマーでは、亜鉛ポルフィリン間のエネルギー移動効率が下がるために、中心へのエネルギー移動効率が著しく下がることが明らかになり、天然の光合成と類似の機構が働いていることが明らかになった。さらに、亜鉛ポルフィリンと中からの距離を変えたデンドリマーを合成し、中心へのエネルギー移動効率を調べたところ、距離が離れても効率が下がらず、デンドリマー構造の特殊性が現れることを見いだした。 また、光誘起電子移動におけるデンドリマー構造の特殊性を検討するため、フォーカルポイントにフラーレンを有するポルフィリンデンドリマーを設計し、過渡吸収スペクトル測定により、電荷分離状態の寿命の構造依存性を検討した。その結果、デンドリマーの世代数が増加するに従って、電荷分離状態が長寿命化することが見いだされた。これは、光誘起電子移動によりポルフィリン部位に生じた正孔がポルフィリン間でホッピングし、フラーレンからの逆電子移動の確率を抑えているためと解釈される。
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