平成11から13年度の3年間で、以下の知見が得られた。 1 中心にポルフィリン、周囲に芳香族デンドリマーを有する分子において、芳香族の吸収帯である280nm励起により、80%の高い効率で中心に光エネルギーが伝達された。伝達効率はデンドリマーのモルフォロジーに大きく依存し、一部のデンドリマーが欠損して形状が非球状である場合、移動効率が30%以下に低下した。蛍光偏光解消実験から、球状デンドリマーでは励起エネルギーはデンドロン内を高速に移動することが分かった。 2 芳香族をポルフィリンで置き換えたデンドリマーにおいても、70%以上の高効率で周囲のポルフィリンに吸収された可視光のエネルギーが中心に伝達した。モルフォロジー依存性、蛍光偏光解消実験の結果は、1と同じ結論を示した。2の系は、天然の光合成における光捕集アンテナの仕組みとよく似ており、光合成の高効率なエネルギー利用を理解する上で重要である。 以上の研究により、「光機能性分子を空間特異的に球状に配列することにより、高効率なエネルギー移動が実現できる」という設計上の一般的な指針が得られると共に、配列を実際に行う上でのデンドリマーの有用性が示された。
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