光合成初期過程として特に重要な光エネルギーの捕獲過程における連鎖反応系を解析した。モデル系を用いず生体試料を対象として行い、応用も視野に入れた。 最近発見された新規色素を持つ光合成生物について、その性質を調べた。クロロフィルdを持つAcaryochloris marinaではそのアンテナのエネルギー準位が反応中心よりも低いにも拘わらず、エネルギー勾配に逆らった移動が起こることを明らかにし、新しい反応系であることを示した。またクロロフィルdを持つ新規の原核藻類を発見し、60年間の論争を決着させた。現在、この色素の存在意義を解析中である。 中心金属に亜鉛を含む新規のバクテリオクロロフィル(Zn-BChla)を持つ光合成細菌Acidiphilium rubrumの反応中心スペシャルペアーの空間配置が紅色細菌のそれとは異なることを磁気円偏光二色性の測定から明らかにした。分子間相互作用が小さいために、反応速度論にも違いが生じていることが示唆された。 シアノバクテリアの主要なアンテナ色素タンパク質であるフィコビリンタンパク質について基準振動解析を行うことでタンパク質構造が連鎖反応系の素子に与える影響を調べた。その結果、タンパク質が素子の電子状態の安定化に寄与していることが実証された。 カロテノイドのアンテナ機能を発現させる機構をフェムト秒蛍光アップコンバージョン法で解析し、S2状態での速い振動緩和過程がアンテナ機能の発現に大きな寄与をしていることを明らかにした。
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