分子設計の立場からみた分子磁性金属の磁性と伝導

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11224203
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 森 健彦 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60174372)
• 研究分担者: 御崎 洋二 京都大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90202340)
• キーワード: d-π相互作用 / 有機伝導体 / 電子相関 / モット絶縁体 / 金属・半導体転移

研究概要

有機伝導体BEDT-TTF塩の統一的理解として、金属-半導体転移するθ塩の研究から、金属-半導体転移温度は平行でない分子間の二面角でスケールされること、分子軌道の重なりが分子面が90℃に近づくと急激に大きくなることがこのような統一的相図の原因であることを明らかにした。また有機伝導体の絶縁相として、バンド絶縁体的に非磁性のものと、モット絶縁体的に常磁性のままのものとがあるが、電子を二量体上に局在させたとして、構造上スピンが対を作れば非磁性となり、対を作らなければ常磁性になるという一般則を導いた。超伝導体をこれに従って分類することによって、潜在的に非磁性的な超伝導体はいずれも二量体がさらに二量化したような構造をもつこと、相図の上では常/非磁性超伝導相はそれぞれ常/非磁性絶縁相と接しており、超伝導の対形成に関しても何らかの違いがある可能性も考えられることを明らかにした。さらに(DTM-TTP)(TCNQ)、(TCE)、(TMET-TTP)_2(TCNQ)などのTTP系伝導体のESRの測定を行い、g値の温度依存性から磁化率をドナーとTCNQの寄与に分離することによって、一次元性の強い前者のような錯体は非磁性絶縁相をとり、二次元性の強い後者は常磁性絶縁相になることを明らかにした。また磁性アニオンを含む有機伝導体のd-π相互作用の理論的研究から、d-π相互作用の強さがをアニオン上のd軌道とドナー上の軌道との重なりから計算する方法を確立した。

研究成果

• [文献書誌] T. Mori: "Structural Genealogy of BEDT-TTF-Based Organic Conductors III Twisted Molecules : σ and α' Phases"Bull. Chem. Soc. Jpn.. 72. 2011-2023 (1999)
• [文献書誌] S. Hanazato et al.: "Transport Properties of α"-Phase Organic Conductors, (BEDT-TTF)_2 (CsHg (SCN)_4 and (BEDT-TTF)_2 K_<1.4> Co (SCN)_4"Physica C. 316. 243-250 (1999)
• [文献書誌] G.K.R. Senedeersa et al.: "2h_F CDW Transition in β-(BEDT-TTF)_2 PF_6 Family Salts"J. Phys. Soc. Jpn.. 67. 4193-4197 (1998)
• [文献書誌] H. Hoshino et al.: "Structural and Magnetic Properties of Cu[C(CN)_3]_2 and Mu[C(CN)_3]_2"Inorg. Chem.. 38. 4229-4232 (1999)
• [文献書誌] M. Taniguchi et al.: "(CPDT-STF) (TCNQ) : a New Charge-Transfer Complex Metallic down to Low Temperature"Solid State Commun.. 111. 559-564 (1999)
• [文献書誌] Y. Misaki et al.: "Novel Oxygen-Containing T1-Electron Donors for Organic Metals : 2-(1,3-Dithil-2-ylidene)-1,3,4,6-tetrathiapenfalene"Chem. Mater.. 11. 2360-2368 (1999)