新規フェルダジルラジカルを用いた分子強磁性体と分子強磁性伝導体の構築

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11224205
• 研究機関: 愛媛大学
• 研究代表者: 向井 和男 愛媛大学, 理学部, 教授 (70036193)
• 研究分担者: 小原 敬士 愛媛大学, 理学部, 助手 (10284390) ; 東 長雄 愛媛大学, 理学部, 教授 (00093914)
• キーワード: 分子磁性 / 有機強磁性 / 超伝導 / フェルダジルラジカル / ラジカル結晶 / スピンパイエルス転移 / 磁化率 / 結晶構造

研究概要

50種を超える新規Verdazylカチオンラジカルとその電荷移動錯体を合成し、SQUID、ESR、X線、比熱などの測定を行い、以下に示すような興味ある結果を得た。
1)ドナー性の高い置換基であるジメチルアミノ基を導入したVerdazylラジカルを合成し、その磁性の研究を行った。このラジカル類の酸化電位(E_<1/2>)を測定したところ、TTF(E_<1/2>=349mV)に近い値を示すものも見出された。今後、種々の電子受容体との電荷移動錯体の合成を試みる予定である。
2)新しい有機強磁性伝導体や強磁性(超)伝導体の発見を目指し、Trimethylanilinium-verdazylカチオンラジカルとTCNQ、TCNQF_4などの電子受容体との組み合わせによる、(1:1)および(1:2)電荷移動錯体を数多く合成し、その構造と磁性の研究を行った。今後、これらの錯体の伝導性の測定を行うことを予定している。
3)Verdazylカチオンラジカルと超伝導性を示す含イオウ金属化合物、[M(dmit)_2](M=Ni,Zn,Pd)、との組み合わせによる分子性金属塩を数多く合成し、その構造と磁性の研究を行ったところ多くの興味ある結果が見出された。
4)我々の研究室で見出したスピンパイエルス転移化合物p-CyDOVについて、スピンパイエルス(SP)転移に対する非磁性および磁性不純物効果の研究を行った。まず、磁性不純物を含む系で、比熱の測定により、SP転位温度以下の低温で反強磁性状態への転位が確認された。更に、強磁場下(H=0-55T)における磁化測定とSQUID測定を行い、その解析結果から、低温に於けるSP相と反強磁性相の存在の割合を求めた。この様な結果は純有機ラジカル系に於いては初めての例である。

研究成果

• [文献書誌] K.Mukai: "Magnetic Property of Verdazyl Radical Alloy, (p-CDpOV)_<1-x>(p-BDpOV)_<x・> Doping Effect of Magnetic Impurities ..."J.Phys.Soc.Jpn.. 68. 3078-3085 (1999)
• [文献書誌] K.Mukai: "Doping Effect of Magnetic Impurities on the Spin-Peierls Compound p-CyDOV"Chem.Phys.Letters. 311. 446-452 (1999)
• [文献書誌] K.Mukai: "Doping Effects of Magnetic Impurities on the Spin-Peierls (p-CyDOV) and Dimer (p-BrDOV) Systems"J.Phys.Chem.B. 103. 10876-10882 (1999)
• [文献書誌] J.B.Jamali: "Alloying Effects on Intermolecular Magnetic Interactions in Verdazyl Radical Alloy Crystal. (TOV)_<1-x>(TOV-H)_x, x=0.0-0.09"Mol.Cryst.Liq.Cryst.. 334. 121-130 (1999)
• [文献書誌] M.Mito: "Pressure Induced Enhancement of Tc in Weak-Ferromagnetic Radical Crystal 1,3,5-Triphenyl-6-oxoverdazyl"Mol.Cryst.Liq.Cryst.. 334. 369-378 (1999)
• [文献書誌] K.Mukai: "Effect of Nonmagnetic Impurities on the Spin-Peierls System ; p-CyDOV"Physica B. (in press). (2000)
• [文献書誌] K.Mukai: "Magnetic Properties of Organic Materials, Chap.21"Ed.P.M.Lahti (marcel Dekker). 21 (1999)
• [文献書誌] K.Mukai: "Molecular Magnetism --- New Magnetic Materials"Eds.K.Itoh and M.Kinoshita (Kohdansya Scientific)(in press). (2000)