研究概要 |
平成12年度は6-置換-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールを用いる有機メッキ技術によるマグネシウム合金の耐食性と接着性を中心に検討した。有機メッキとは電気化学的手法を用い、金属表面を有機物薄膜で被覆する新しいコーテング技術である。この技術は腐食性の高いマグネシウム合金に対しても有効である可能性を持っており、最近マグネシウム合金表面を機能化する観点から研究が進めれている。 マグネシウム合金に対するトリアジンジチオールの有機メッキにおいてマグネシウム合金が水中で腐食し易いため電解質の選択は重要である。一般にアルカリ側で有機メッキできるが、0.5M濃度以上のNaOHを電解質として使用した有機メッキでは腐食は極度に抑制され、有効なメッキ浴となる。しかし、有機メッキ温度が高くなると、腐食が起こり、20℃以下で有機めっきを行うことが肝要である。有機メッキ中に生成する表面層は上層が有機メッキ薄膜からなり、その下に酸化被膜層、Mg(OH)2の層と続くことが分かった。 有機メッキ処理マグネシウム合金は有機メッキ未処理マグネシウム合金(無機被膜:65nm)に比べて、酸化腐食が著しく抑制される。さらに、DHN濃度、すなわち、有機メッキ被膜厚さが厚いほど、飽和水蒸気中における腐食が抑制される。NaCl水溶液中での腐食においては無機被膜の成長と溶解が起こるが、30℃では成長が優先するが、有機メッキ被膜の効果は明らかである。 有機メッキ処理マグネシウム合金とEPDM(不飽和ゴム)の接着においては膜厚が10-20nm程度で高い剥離強度(接着強度)がえられ、膜厚がこれ以上になると接着強度は減少した。有機メッキ処理マグネシウム合金とPPS(ポリフェニレンサルファイド)の射出成型接着では金型の温度が接着のために重要な因子であり、140℃以上の金型温度で母材破断の接着物が得られた。これら二種類の接着において、被膜成分と高分子材料(EPDM,PPS)の反応性が接着の重要な因子であると考えられる。
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