研究概要 |
昨年度の研究により、溶解法による探索ではMg-Al基三元系合金が第3元素の種類によって水素吸蔵特性が大きく異なること、および超高圧合成法を用いた探索ではMg-Ni-H系にこれまでに報告されていない水素化物が存在することが判明した。そこで、本年度はこの研究を進めて、(1)Mg-Al-M三元系合金の水素吸蔵特性と微細組織の関係を調査すること、および(2)超高圧合成法によるMg-Ni-H系新規化合物の作製と結晶構造の解明を行うことを目的とした。 1.Mg-Al-M三元系合金の水素吸蔵特性と微細組織の関係 実用合金であるMg-Al-Zn系合金(AZ31)を対象に水素処理による組織微細化の可能性について検討した。水素化は最大10MPaの水素圧が印加可能なPCT装置にて、350℃,7MPa,24hの条件下で行った。脱水素化は同温度で真空引き時間を1,3,24hと変化させて行った。水素化処理をかねたPCT測定から、350℃においてAZ31合金は純Mgとほぼ同等の7.4mass%の水素吸放出能を有することを確認した。X線回折より水素化に伴い不均化反応が起こること、脱水素化処理により元の合金に再結合することを確認した。また、TEMによる組織観察から水素化物の析出形態についての知見を得た。 2.起高圧合成法による新規水素化物の作製と結晶構造の解明 昨年度に、超高圧合成により見い出されたMg-Ni-H系の新規水素化物の組成をMg_2Ni_3H_<3.4>と決定した。また、TEMとX線回折により結晶構造を斜方晶(a=0.8859(4)nm,b=1.3740(5)nm,c=0.4694(2)nm)と決定した。新たな探索系としてCa-Mg-Ni三元系の超高圧合成を試みたところ、CsCl型結晶構造を有する(Ca_<1-x>Mg_x)_2NiH_δなる新水素化物の存在が見い出された。またこの水素化物は、Mg量に依存せず646K近傍で分解することが確認された。
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