研究概要 |
本研究の実験装置としては最高6GPaの超高圧を発生可能な立方体アンビル式超高圧合成装置を用いた。原料には、いずれも粉末状のMgH_2,CaH_2,YH_3およびMnを用いた。探索組成は、1)(Mg_<1-x>Ca_x)H_2、2)(Mg_<1-x>Y_x)H_x、3)MgH_2-x mol%Mnの3組成とした。粉末を秤量、混合、圧粉した後、試料は、水素不足を補うための外部水素源であるNaBH4とCa(OH)2の混合圧粉体と一緒にBN製のセパレーターを介してNaClセルに封入された。Naclセルは水素シール効果、圧力媒体さらには絶縁体として機能する。外部水素源を用いない場合はBNセルを使用した。合成条件としては、温度1073〜1273K、圧力2〜5GPa、2時間を用いた。相の同定には粉末X線回折法を用いた。水素化物の熱的安定性はDSCによりAr気流中で測定された。 CaH_2-x mol%MgH_2系ではx=67において1223K,5GPa,2hの合成条件でBCC型結晶構造を有する新規水素化物が合成された。この新規水素化物はXRD回折パターンからは以前のCsCl型(Ca_<1-x>Mg_x)_2NiH_4において観察された(100)規則格子線は認められないことから、MgとCaがランダムに分布するBCC型構造をとるものと推察された。 また、MgH_2-xmol%YH_3系ではx=67において1073K,5GPa,2hの条件でFCC構造と同定される相が新規水素化物として合成された。SEM-EDXによる組成分析では生成相はMg-69mol%Yと配合組威とほぼ一致する値を示した。 MgH_2-x mol%Mnにおいては、これまでに報告されているように、x=25において原料では同定できない水素化物のプロファイルが得られた。この相を同定するために、M. Bortzらが報告した中性子回折による結晶構造解析の結果を用いたところ、本研究で得られた水素化物は既報のMg_3MnH_7相とは異なる結晶構造を有していることが判明した。この新規水素化物相と既報の水素化物は3GPaの圧力を境界として結晶構造が変化することも確認した。
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