研究概要 |
これまでの研究により、超高圧合成法を用いた探索ではMg系にこれまでに報告されていない水素化物が存在することを見出し、また、HDDR反応がAZ31粉末試料の結晶粒微細化に有効であることが確認された。本年度は高圧合成ではMg-Mn系及びMg-RE系(RE=Y, La)に着目し、結晶粒微細化に関しては板材への適用を中心に研究を展開した。 Mg-Mn-H系において3GPa以上の高圧下で見出された新規水素化物の熱的安定性と水素量が熱重量法及び溶解抽出法により決定された。その水素量は3.7mass%であり、新規高圧水素化物はMg_3MnH_6と表記されることが判明した。また、この相は620K近傍にて水素放出を伴い分解することが明らかとなった。同様にMg-Y系において見出された高圧相はMgY_2H_8であることが判明した。この高圧水素化物はFCC構造を有するが、その結晶構造がリートベルト法により精密化された。さらに、この高圧水素化物の特徴としては600K近傍において八面体位置を占有する約1/3の水素が部分的に放出されるが、残りの約2/3の水素(四面体位置を占有)が結晶構造を維持する役割を有する点が挙げられる。この水素サイトの安定性と結晶構造安定性は密度汎関数法による第一原理計算からも支持された。さらに、Mg-La-H系においてもMg_3LaH_9なる新規高圧水素化物の存在が確認された。 Mg-Al系合金のHDDR法による結晶粒微細化に関しては板材への適用を検討した。まず、板材形状での水素化処理としては、350℃、24時間で水素化・脱水素化処理しうる粉末試料と比較して高温長時間の処理が必要であることが判明した。400℃、36時間の水素化処理の結果、処理後の結晶粒径は0.2〜0.5μmとなり、0.1μmの粒径が得られる粉末試料に比べて増加していた。1μm以下の結晶粒径を得る目的は達成されたが、同時にこの処理が適用しうるのは表面から約20μm程度の深さであることが判明した。この被処理層の厚さを増加させることが今後の課題といえる。
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