研究概要 |
本年度は,マグネシウムの溶融塩電解精製を行う際に問題となる合金元素,不純物元素の挙動を明らかにし,マグネシウムの溶融塩電解精製を試みた.研究では,マグネシウム金属の耐食性に大きな影響を及ぼすといわれている,鉄,ニッケル,クロムなどを対象として,これら金属の溶融塩中での酸化還元挙動を調査するとともに,これらの純金属の電解溶解についても調査した.研究の結果,これらの元素の酸化還元反応は,マグネシウムよりかなり貴な電位で起こることが確かめられ,電解精製法を用いた場合は原料電極(陽極)にとどまる傾向を持つことがわかった.この結果を参考にして,マグネシウムの電解精製を試みたが,マグネシウム金属の融点以下での電解では良好な電析物が得られなかった.一方,融点以上の電解では,良好な電析物が得られ,電気化学的測定から予想されたとおり,鉄等の不純物が除去できることが確認された. 本年度は,マグネシウムの溶融塩電解法を行う上で必要不可欠な電極材料やセラミックス材料についても検討した.研究の結果,マグネシウム電析用の陰極材料としてモリブデンが優れること,セパレーター等として用いるセラミックスとしては高純度マグネシアが十分使用に耐えることを明らかにした.また,溶融塩と液体金属マグネシウムの間の元素分配についての検討も行った.その結果,本研究で用いたMgCl_2-NaCl-CaCl_2溶融塩,MgCl_2-NaCl-KCl溶融塩の主成分は液体金属マグネシウムに移行しなかった.一方,これら溶融塩にMnCl_2を添加した場合にはMnの液体金属マグネシウムへの移行が起こることを確認し,分配平衡常数,移行速度等を測定することができた.
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