研究概要 |
H13年度は,(1)蒸着試料の大型化,(2)蒸着膜の欠陥減少,(3)蒸着膜の密着性向上を目標として研究を行った.また,(4)固相リサイクル班(研究代表者:産総研 馬渕)と連携して,蒸着被覆試料の固体リサイクル法への適用を図った. (1)従来の試料寸法は,10×10×6mm^3と,比較的小さなものであった.実用化の観点からは,大型基板への蒸着が必要となるため,内径90mm,長さ1000mmの真空蒸着炉を新たに作製した.蒸発源および蒸着基板は,従来と同じであり,それぞれ3N-MgおよびAZ31マグネシウム合金である.基板寸法は,蒸発源に面した側面を60×6mmとし,長さを30〜200mmとした.蒸着条件を種々検討した結果,60×100×6mm^3程度の大きさの基板に均一に蒸着できることが明らかとなった. (2)蒸着膜と基板の断面組織を観察すると,界面の微小なボイドおよび蒸着膜を貫通するピンホールなどの欠陥があり,これら欠陥は耐食性を劣化させると考えられる.基板温度と温度プロファイルを適正に設定して,欠陥を減少させ,耐食性のさらなる向上を図った.その結果,厚さが比較的均一で,しかも欠陥の少ない蒸着膜が作製できた.3%NaCl水溶液への浸漬試験の結果,欠陥の少ない蒸着膜の耐食性は,AZ91Eマグネシウム合金よりも優れ,6N-Mgの耐食性に匹敵することが明らかとなった. (3)上で述べた蒸着膜の欠陥を,ホットプレスまたはHIP処理により押しつぶすことにより,密着性を向上させるとともに,耐食性をも向上させることを試みた.673K,7MPaでホットプレスを行った結果,蒸着膜/基板界面のボイド,および蒸着膜中のピンホールなどが消滅することが明らかとなった.また,ホットプレス後の試料の耐食性は,蒸着したままの試料よりも優れることが示された. (4)蒸着被覆を施した試料を固相リサイクル班に提供し,673K,押出し比6:1で熱間押出しを行った.室温強度は,蒸着無しの押出し材に比較してやや劣るものの,耐力および伸びは同レベルであることが示された.
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