研究概要 |
新規のナノ力学測定装置の構築 生体分子に力がかかっている状態、あるいは力によって変形している状態の構造の特徴と生化学的機能を光学的に測定するための基本装置の構成を決め、要素部分の選定と導入を行った。構成は、分子の力学的操作を目的とする原子間力顕微鏡(東京インスツルメンツ(TIIと略記)製Nanofinder)を備えた共焦点蛍光顕微鏡(既存)と蛍光励起のためのパルス光源(Avesta社製TiF50組み込み)、試料蛍光の分光光学系、蛍光スペクトル、蛍光寿命および蛍光像をそれぞれ測定するための検出器からなっている.この装置を用いてタンパク質の単一分子延伸実験を以下の準備のもとに行なっている. 生体高分子複雑系に対するナノカ学測定方法の開発状況 タンパク質系の蛍光測定に用いられるCy3という色素を結合したキモトリプシン及びα2-マクログロブリンの単一分子同定を蛍光顕微鏡により行なった.またタンパク質自身が天然の蛍光発色団をもつグリーン蛍光タンパク質の遺伝子を入手し,大腸菌により発現したタンパク質の単一分子同定を行なった。このような単一分子同定が可能であることが示されたので,さらに原子間力顕微鏡部分の取り付けにより,単一タンパク質分子に力学的摂動を加えた状態での構造や機能の特徴を測定する方法の確立を行なっている。タンパク質のN-末端側とC-末端側を反対側にひくことにより立体構造をもって丸まっているタンパク質を引き伸ばす実験は炭酸デヒドラターゼ,カルモジュリンなど球状の酵素タンパク質を対象として選び,その単一分子を延伸する際の力学測定を行なっている.
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