研究概要 |
本年度は以下の結果を得た. 1)電気化学顕微鏡による細胞機能と形状の同時イメージング: 白金マイクロディスク電極をプローブとし、植物細胞(ハネモ)プロトプラスト近傍の酸素濃度計測に成功した.また,この酸素濃度を二次元マッピングすることにより細胞の光合成および呼吸活性をイメージングできた.2つの白金ディスクが先端部に配置されたデュアルマイクロディスク電極をプローブとした場合には,細胞の形状と光合成活性,あるいは形状と呼吸活性の同時イメージングが可能であった. 2)共焦点顕微鏡による細胞内構造のイメージング: 多核単細胞緑藻類であるハネモの原形質から成体への再生過程をリアルタイムで観測することに成功し、プロトプラストの膜表面にクロロプラストが局在していることなど、細胞内構造に関する3次元的情報を得た。 3)モータータンパク質キネシンのイメージング: 細胞分裂や物質輸送に関与しているモータータンパク質であるキネシンを、ポリスチレンビーズに結合させ,これを微小管と混ぜるとキネシン・ビーズ・微小管複合体が細胞骨格のような構造を形作ることを明らかにした。これにCaged-ATPを加え,紫外線を当てて運動を開始すると細胞運動のような形態変化が観測された。 4)ESRスピンプローブ法によるサケ科サクラマス魚卵の酸化還元機能解析: 魚卵のin vivo計測の結果、受精直後に存在する還元機能はすみやかに低下したが、10日目に急激に活発になり、その後孵化までほとんど消失することが分かった。また、携帯可搬型ESR装置の開発も行いプローブヘッドと発振器の小型化に成功した。 5)磁気ピンセットシステムの開発: 電磁石による磁場回転システムを試作し、F1-ATPaseのトルクの測定を開始するとともに、時計回り回転によるATP合成とその検出を試みた。また、鉛直方向に向いた磁場でDNAの端に付けた磁気ビーズをつり上げることにより、RNA合成酵素によるDNAの右ねじ状回転の観察に成功した。
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