研究概要 |
本年度は以下の結果を得た. 1.単一動物細胞のバイアビリティ評価法として、電気化学顕微鏡による呼吸量計測法と、生死判定用蛍光試薬を用いた方法とを比較して各々の特長を整理し、相補的活用への指針を得た。HeLa細胞を用いた実験では、エタノールなど細胞膜構造にダメージを与えるタイプの刺激に対しては蛍光試薬法が有効であるのに対し、シアン化カリウムなどによる活性変化は電気化学法によって迅速に検出可能であることが分かった。 2.Bis-oxonol型のアニオン性膜電位感受性色素であるDiBAC_4(3)を蛍光プローブとし,共焦点レーザー顕微鏡により、膜電位変化のイメージングを試みた。カリウム溶液に細胞を懸濁した後,バリノマイシンの添加により細胞の蛍光強度が時間と共に増大していく様子を共焦点レーザー顕微鏡によって観測し,膜電位の過渡変化を追跡することが可能となった. 3.光トラップで好中球内穎粒を捕捉し,その後極微小振動させることにより,細胞骨格および細胞質の粘弾性特性に関する検討を行った.その結果,遊走中の好中球では、仮足進展部の粘弾性が体部、尾部に比べて低くかった.これは,クチン等の細胞骨格が疎であることを示唆する. 4.in vivo ESR法により,サケ科サクラマス魚卵の酸化還元機能を受精から孵化まで調べた.その結果,孵化するまで酸化能あるいは還元能は極めて弱いことが明らかとなった.また,魚卵にストレスを負荷すると尾芽体発現時期に高い還元能を示したことから,魚卵の胚盤の部分にある血液脳関門のような防御機構が,正常な発育状態にある場合のみ正常に動作したものと考えられる.このような計測を飼育現場で行うために,ポータブルESR装置の開発を行った.さらに,魚卵のOCT断層画像の取得を試みた結果,魚卵内部の構造変化に関しての知見が得られることが分かった.
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