研究概要 |
<銅錯体による酸素分子の可逆的4電子酸化還元と配位子の水酸化反応:> 一連の立体的にかさ高い三脚型四座配位子を含む銅(I)錯体([Cu(L)]^+)と酸素分子と反応によりbis(μ-oxo)Cu(III)、錯体([Cu_2(O)_2(L)_2]^<2+>)の合成に成功した。このbis(μ-oxo)Cu(III)_2錯体は,窒素ガスを吹き込むことにより酸素-酸素結合を再生して銅(I)錯体を生成し,酸素分子の可逆的4電子酸化還元能を持つことを見出した。また,bis(μ-oxo)Cu(III)_2錯体は配位子のメチレン基を水酸化する能力をも持つことを明らかにした。さらに配位環境の立体的・電子的効果により,反応性の精密制御を可能とした。 <多様な酸素活性種を含むニッケル錯体の創製と反応性> 三脚型四座配位子を含むbis(μ-hydroxo)Ni(II)_2錯体と過酸化水素との反応による配位子に組込んだメチル基のアルコール及びカルボン酸イオンへの酸化反応で,一連の酸素活性種(bis(μ-oxo)Ni(III)_2,bis(μ-superoxo)Ni(II)_2及びbis(μ-alkylpeloxo)Ni(II)_2錯体)の単離に成功しメチル基の酸化反応機構を明らかにした。 <単核過炭酸イオン鉄(III)錯体による酸素-酸素結合の可逆的開裂と再生> キナルジン酸イオン(qn)と過炭酸イオンを含む鉄(III)錯体([Fe(qn)_2(O-OC(O)O)]^-)を合成し、パーオキソ部が^<18>O-^<18>Oから^<18>O-^<16>Oを経て^<16>O-^<16>Oへと変換することを共鳴ラマンおよびESI-MS測定により明らかとした。この変換は、酸化活性種と推定されているFe^<IV>=OあるいはFe^V=O種を経る酸素-酸素結合の可逆的開裂と再生を示しており、酸素活性化機構の解明に重要な知見を与えるものである。
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