金属錯体の合理的設計による新しい酸素分子活性化反応

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11228207
• 研究種目: 特定領域研究(B)
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 成田 吉徳 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 教授 (00108979)
• 研究分担者: 谷 文都 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 助手 (80281195)
• キーワード: 酸素錯体 / 金属酵素 / チトクロームP-450 / チリクロームc酸化酵素 / モデル化合物

研究概要

酸素分子活性化のための、金属一酸素錯体の二電子還元による酸素-酸素結合の不均等開裂と高原子価金属錯体の生成について以下の2つの金属酵素化学モデル錯体を用いて研究を進めた。本特定領域研究の初年度となる今年度は酸素錯体の活性化研究に必須となる安定な酸素錯体の形成に主眼をおいて進めた。チトクロームc酸化酵素活性中心に見られる、ヘム(Fe_<a3>)-銅(Cu_B)錯体の二核金属による二電子還元システムをモデル化した銅錯体結合鉄ポルフィリンの還元体は酸素と反応して酸素錯体を与える。酸素配位子周辺を立体保護することにより、従来1時間程度の熱安定性が、半減期20日となり、極めて安定な錯体の生成に成功した。次年度以降において、酸素錯体のX線結晶構造解析とヘム側の窒素軸配位子による電子注入効果による酸素錯体活性化の研究を進める上で不可欠の成果である。第二法として、チトクロームP-450に見られる、鉄ポルフィリン酸素錯体への2電子/2プロトンの注入による酸素分子活性化のモデル化を行った。新たに「双冠」ポリフィリンと呼ぶ、酸素活性中心部位における酸素活性化に必須の官能基を備えたモデル錯体を合成した。電子供与性のチオレート軸配位子を有するFe(III)ポルフィリンはその立体保護により酸素雰囲気・室内光下で大きな安定性を示し、その還元体は酸素錯体を安定に形成することを見いだし各種スペクトル手法によりその構造を確認した。

研究成果

• [文献書誌] Y.Tachi: "(S)-3,3'-Diformyl-2,2'-Di(methoxymethoxy)-1,1'-binaphthyl"Acta Crystar.. C55. 1351-1353 (1999)
• [文献書誌] S.Yano: "General Synthesis of Useful Chelation Reagents Having a Suger Uint,1,3-Diamino-2-propyl β-D-Glucopuranoside and 1,3-Diamino-2-propyl α-D-Mannopyranoside"Chem.Lett.. No.3. 255-256 (1999)
• [文献書誌] F.Tani: "Synthesis and Characterization of an Iron Porphyrin with a Thiolate Axial Ligand and Its Dioxygen Adduct as a Model for the Active Center of Cytochrome P-450"Chem.Lett. No.8. 729-730 (1999)
• [文献書誌] T.Hayashi: "Synthesis and Properties of Alkylperoxocobald(III)Porphyrin and Porphycene"Chem.Lett.. No.1. 90-91 (2000)
• [文献書誌] N.Kamiya: "Catalytic and Structural Properties of Surfactant-Horswradish Peroxidase Complex in Organic Media"Biotechnology Progress. 16(No.1). 52-58 (2000)
• [文献書誌] M.Matsu-ura: "Hydrogen-bonded Dioxygen Adduct of an Iron Prophyrin with an Alkylthiolate Ligand;An Elabolate Model of Cytochrome P-450"Angew.Chem.Int.Ed.Engl.. ------(印刷中). (2000)