研究概要 |
全固体型リチウムイオン二次電池用の高分子電解質マトリックスとして、分岐形ポリエーテルを用いて、電気化学特性と構造化学的研究を行った。ポリマーとして側鎖のオキシメチレン鎖長(n)が1,2,3の分岐形ポリ(オキシメチレン)を合成した。それぞれ、MEC, BEC, TECと略称する。 3種のポリエーテルの結晶性をX線回折法により検討して、いずれも側鎖の導入により結晶化度が低下することを見出した。側鎖長n=2の場合が最も効果的であるが、かさ高さの変化にもかかわらず三者の結晶化度を低下させる(アモルファス化)能力の差はそれほど大きくはなかった。いずれの場合も側鎖含量が20%程度でアモルファス化が達成され、回折パターンにおける結晶ピーク位置は直鎖のポリ(オキシエチレン)のそれと一致していることから、側鎖のオキシエチレン鎖は結晶格子中に入り込まず、アモルファス領域に存在することが推定された。すなわち、オリゴ(n=1,2,3)オキシエチレン鎖を側鎖として導入することにより、かさ高い側鎖を避けて主鎖のオキシエチレン鎖が結晶化してゆくこと、従つて側鎖の導入により結晶化度が低下することが明らかとなった。リチウム塩をドープするとイオンはアモルファス領域に溶解する。 BECに急冷法で合成されたLi_2S-SiS_2-Li_4SiO_4系オキシスルフィドガラスの粉末を混合して、イオン伝導性複合体を作製した。前年度はTECとの複合体について検討を行っており、BECの方がアモルファス性が高いと考えられることからより優れた複合体になるものと予想した。しかし、予想に反して混合はより困難で、イオン伝導性の向上を認めることができなかった。ガラス粒子の分散がBEC中ではTECに比べて不均一なためと考えられるので、ガラス粒子とBECの混合法について、現在、検討を進めている.
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