研究概要 |
本研究は,非線形光学効果である光パラメトリック発振(OPO),差周波発生(DFG)および和周波発生(SFG)技術を駆使して0.1〜10THz(波長3mm〜30μm)の周波数域におけるTHz波の発生・検出技術を開発し,これらを応用したセンシング技術を確立することにより,半導体材料,超伝導材料科等の物性解明を図ることを目的としている。平成11年度は,この実現を目的とし以下の研究を行った。 1.センシング用コヒーレントTHz波光源の開発(分担:四方潤一) LiNbO_3結晶におけるフォノンポラリトンを介した光パラメトリック発振によるコヒーレントTHz波発生において,本研究ではMgOをドープしたLiNbO_3結晶の最適ドープ濃度とTHz波発生特性の関係を明らかにし,THz波発生領域の拡大とTHz波出力の増大を実現した。MgOのドープ量を1〜9mo1%変化させて育成したLiNbO_3結晶を用いて,ラマン特性および光パラメトリック発振特性を詳細に検討した結果,5mol%ドープした結晶がアンドープ結晶よりTHz波出力がほぼ5倍増大し,またTHz波発生レンジも1〜3THzと拡大することを実験的に確認した。これは,アンドープLiNbO_3結晶の存在する結晶欠陥をMgOが補償することによりフォノンポラリトンゲインの増大とTHz波吸収の低減によるものと考えられる。 2.DFGを用いたHz波シンセサイザーの開発(谷内哲夫) OPO方式は,単一の励起光源で直接THz波が発生可能である特長があるが,発振しきい値がほぼ10mJと大きいことと材料の吸収と利得により発振波長域が制限される課題がある。本研究では広範囲な波長可変コヒーレントTHz波の発生が可能であるDFG方式において,2波長の光波発生にOPOを用いたセンシングに必要なTHz波長,スペクトル幅,パワー等を自在に合成可能な「THz波シンセサイザー」の研究を進めた。まずKTPのTypeII位相整合のOPOを用いた2波長光源における,波長,スペクトル幅および波形の制御技術の開発を行った。特に,大きな非線形光学効果を有する有機DAST結晶およびGaP,CdTe結晶の位相整合が可能な,0.98〜1.15μmの波長域における2波長光源を開発し,DAST結晶を用いてDFGを行った結果,最大出力2.3mWで0.2〜1.4THzの波長可変コヒーレントTHz波の発生に成功した。また,GaP結晶では0.5〜2.5THzの広帯域THz波発生が可能であることを見出した。
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