研究概要 |
本研究では非線形光学技術を用いてコヒーレント波長可変テラヘルツ(THz)波の発生,検出およびセンシングシステム技術の確立を図ることを目的としており,平成12年度は,差周波発生(DFG)を用いたコヒーレントTHz波光源の特性向上と共に,センシングに必要なTHz波検出システムの研究を行った。 1.DFGを用いたTHz波シンセサイザーの特性向上(分担:谷内哲夫) DFGを用いたTHz波発生方式は,波長可変コヒーレントTHz波の発生が可能である。広帯域なTHz波の発生と制御が可能な「THz波シンセサイザー」を実現するために,光パラメトリック発振(OPO)を用いた2波長光源と非線形光学結晶であるGaP結晶を組合せたDFG特性を明らかにした。2ヶのθ=90゜,Φ=55゜カットのKTP結晶を用いた0.532μm励起OPOによる0.97〜0.99μm域の2波長光源を開発することにより,コリニア位相整合状態で0.5〜2THzの波長可変THz波発生に成功し,1.4THzにおいて最大2mWのピークパワーが得られることを確認した。また,周期長9μmの分極反転KTP結晶を用いた光パラメトリック増幅の実験的検討を行った結果,入射光のスペクトル幅を増大させることなく光パワーを3〜5倍増幅可能であることを見出し,THz波DFGの高出力化に有望であることを確認した。 2.THz波検出および分光の研究(四方潤一) THz波と励起光の和周波発生(SFG)により励起光より数nm短い波長の信号光が得られ,THz波の光学的検出が可能である。本方式は,THz波発生用のDFGと同様な材料・構成のままでSFG信号が得られる特長があり,LiNbO_3,GaP,CdTe等の非線形光学結晶におけるTHz波域の吸収特性と位相整合特性を明らかにした。また,フーリエ変換型THz波分光器を作製することによりTHz波分光の基礎検討を行った。
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