本研究の目的は、1.高温超伝導体及び半導体からのテラヘルツ波放射の全貌を明らかにすること、及び、2.テラヘルツ波自体を超伝導材料その他の基礎物性を含む評価に応用することである。以下の研究成果を得た。 1.高温超伝導体YBCO薄膜を用いて種々の形状のアンテナ構造を有するテラヘルツ波放射素子を作製し、その放射特性を調べた結果、ログペリアンテナ型素子で最も強い放射が得られ、100mW励起で10μW以上の放射強度が得られた。 2.光パルス励起テラヘルツ波放射現象を利用した超伝導電流可視化装置を試作し、それを利用して、高温超伝導薄膜中を流れる電流分布のバイアス電流、外部磁場、温度依存性を測定し、磁束侵入のダイナミクスを明らかにした。 3.半導体表面並びに高分子からのテラヘルツ波放射を測定し、半絶縁性InPでは140Kで放射波形の反転が起こることや半絶縁性GaAsでは500Kでの放射強度が室温に比べて30倍以上にもなることを見い出し、表面電場と拡散電流の効果により説明した。 4.テラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)システムとして透過型、反射型、エリプソメトリー型、ファラデー効果型、半導体レーザー励起型(Poorman's THz-TDS)など様々な手法を開発した。 5.THz-TDSをフォトニック結晶に適用し、2次元誘電体球配列フォトニック結晶では大高理論との従来にない一致を得、2次元金属フォトニック結晶では特異な偏光回転を見い出した。 6.汎用テラヘルツイメージングシステムを開発し、金属物体や光励起キャリヤ分布のイメージングに適用した。
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