研究課題/領域番号 |
11233207
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 重信 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (10162629)
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研究分担者 |
守屋 孝洋 早稲田大学, 人間総合研究センター, 助手 (80298207)
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キーワード | サーカディアンリズム / 体内時計 / 時計遺伝子 / 同調 / NMDA / カルシウム / カルモジュリン / グルタミン酸 |
研究概要 |
光による一過性のmPer1やmPer2遺伝子の発現が光同調に関わる事を直接的に証明するために、翻訳開始点を含む18塩基からなるmPer1とmPer2のアンチセンス-S-オリゴヌクレオチドを作成し、その光同調に及ぼす作用を検討したところ、アンチセンスは有意に位相変化を抑制し、溶媒投与やランダムオリゴヌクレオチド投与は全く影響しなかった。mPer1とmPer2のアンチセンス-S-オリゴヌクレオチドを同時に投与したところ、この効果には加算効果が見られた。すなわち、光照射によるmPer1とmPer2の一過性の増大はそれぞれの遺伝子発現ルートを介して、位相変動に寄与しているものと考えられた。NMDA受容体に注目し、NMDA受容体拮抗薬の光による視交叉上核Per遺伝子誘導に対する影響を検討した。その結果、NMDA受容体の拮抗薬MK-801の末梢投与が光による発現上昇を抑制することを観察した。NMDA受容体拮抗による光照射のPer1やPer2発現抑制と光照射の行動位相後退の抑制には非常に強い相関性が認められた。すなわち、光によるPer1やPer2の増大が体内時計の位相変化に直接関わっている事をより明確にした。また、NMDAの視交差上核への局所投与だけで視交差上核のPer遺伝子の誘導が惹起されることを明らかにした。ところでNMDA受容体活性化に伴い細胞内へのカルシウムの流入が惹起されるとカルモジュリンキナーゼなどタンパク質リン酸化酵素が活性化される。カルモジュリンキナーゼ阻害薬のKN-93の効果を調べてみると、キナーゼ活性の抑制と共に光によるPer遺伝子発現上昇も抑制されることが分かった。以上より、グルタミン酸-NMDA受容体-カルモジュリンキナーゼといった一連のシグナル系が、光によるPer遺伝子発現上昇を伝達していることを明らかにすることができた。
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