研究課題/領域番号 |
11233207
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 重信 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (10162629)
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研究分担者 |
海老原 史樹文 名古屋大, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50135331)
秋山 正志 日本学術振興会, 特別研究員(PD)
守屋 孝洋 日本学術振興会, 特別研究員(PD)
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キーワード | 概日リズム / 光同調 / ペプチド / GRP / PACAP |
研究概要 |
外界の光刺激は体内時計をリセットするが、リセットのための神経性の入力は視交叉上核の腹外側部位に終わる。一方、体内時計の発振は視交叉上核の背内側部位にあると考えられている。すなわち外界の光シグナルは視交叉上核の腹外側部に入力後、背内側の発振周期を一時的に進めることにより、あるいは遅らせることにより時計をリセットすることになる。本年度はこの腹外側部から背内側に至る神経連絡がgastrin releasing peptide(GRP)であることを証明した。まず、GRPが腹外側部に多く、その受容体が背内側に多いことを見出した。GRP受容体のノックアウト動物は光同調が弱く、光刺激で誘発される時計遺伝子Per1やPer2発現も弱いことを見出した。さらに脳へのGRPの直接注入はwildマウスでは時計のリセットもPerの発現も引き起こすが、ノックアウトではそのような作用誘発しなかった。本研究は体内時計の光同調と視交叉上核の亜核での時計遺伝子発現の相関を調べた研究である。また本年度は光による体内時計リセット機構の視交叉上核でのpituitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptide(PACAP)の役割も明らかにした。PACAPの脳内投与は行動のリズム位相を変えるがこの作用は光照射と類似していること、またこのときに視交叉上核のPer1遺伝子発現を増大させることを見出した。またPACAPのこのような作用はグルタミン酸受容体遮断薬のMK801で拮抗された。目から視交叉上核へ連絡する神経の神経伝達物質はグルタミン酸と考えられており、PACAPの作用がMK801で拮抗されるという今回の知見は、PACAPがグルタミン酸神経系を介して光同調を補助している可能性を示唆した。
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