マウス胎仔生殖巣原基が性分化を開始する時期に精巣特異的発現を示す遺伝子について解析した。bHLH型転写因子Nephgonadinについて生殖巣分化に伴う発現を詳細に解析したところ、生殖巣の発生に重要な役割を果たしているAd4BP/SF-1と密接に関連した発現パターンを示した。培養細胞での共発現系においてはNephgonadinが発現抑制活性をもつことが見いだされた。また、蛋白質分解酵素阻害因子と相同性をもつ遺伝子CRESPの発現を解析したところ、精巣分化開始時である11〜12日齢以降は精巣でのみ発現しており、生殖細胞マーカーとの二重染色の結果は、精巣の体細胞と生殖細胞の両者で発現していることが明かになった。 マウス胎仔から取り出した始原生殖細胞の体外培養下での減数分裂へ自律的に移行する物質をどの時期の始原生殖細胞が獲得しているかについて解析を行い、生殖巣へ到着前の移動期においても既にあることを明らかにした。また雄始原生殖細胞についても生殖巣へ到着直後の時期までは培養下において減数分裂へ移行するが、それ以降に分離した場合は前精原細胞としての性質を示した。LIF-gp130シグナルが減数分裂への移行を抑制する制御について、gp130を直接活性化する合成リガンドでも同様の効果が示されたが、cAMPレベルを上昇させるフォルスコリンは逆に減数分裂を促進した。 一方、研究分担者野瀬らはマウスvasa遺伝子に蛍光マーカーGFP遺伝子をノックインしたES細胞を作出した。これを用いて、ES細胞が培養下で胚様体を形成する過程において、vasa遺伝子を発現する細胞群が出現するか、その出現に影響する因子などについて解析した。その結果、胚様体中はに予想より短期間で明瞭な発現を示す始原生殖細胞と類似した細胞群が出現した。また各種体細胞の共培養による効果や、サイトカインの影響などについても解析を行った。
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