マウス胎仔生殖細胞の発生と性分化制御機構の解明

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11234201
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 中辻 憲夫 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (80237312)
• 研究分担者: 野瀬 俊明 三菱化学生命科学研究所, 主任研究員
• キーワード: 始原生殖細胞 / 減数分裂 / 性分化 / 精巣 / ES細胞 / vasa遺伝子

研究概要

平成12年度には次のような研究成果が得られた。
(1)マウス胎仔卵巣と精単について、サブトラクション法による遺伝子検索を行って得られた、特異的発現を示す新規遺伝子testatin/crespは、プロテアーゼインヒビターとの相同性をもち、精原細胞とセルトリ細胞に極めて特異的な発現を示し、他の細胞種での発現は全く認められなかった。この遺伝子の発現パターンを詳細に解析した。またこの遺伝子を卵巣で異所的に全現させるためのトランスジェニックマウスを作成して表現型の解析を行ったが顕著な影響はなかった。さらに遺伝子欠損マウスを作るためのターゲティング実験を進めており、今後その表現型を解析する予定である。(2)雌雄生殖巣の性分化に従って複雑な発現パターンを示すbHLH型転写因子pod-1/capsulinについての解析を進めたところ、精巣分化にとって重要なAD4BP/SF-1の発現を抑制することを見いだした。また発現細胞の詳細な解析では、ふたつの遺伝子が精巣組織において相捕的に発現し、精巣の発生分化における重要な役割が示唆された。(3)始原生殖細胞を培養して、滅数分裂への移行と卵母細胞への分化を培養下で進行させる実験系を確立した。そして減数分裂移行を強く抑制する因子としての、LIFおよびgp130シグナル系の生殖細胞分化に対する効果について解析した。(4)胎仔生殖細胞では大規模な細胞死が起きるが、アポトーシス抑制機能をもつbcl-x遺伝子欠損ヘテロマウスにおいて、生殖細胞の大規模なアポトーシスが起きていることを見いだした。また、雌雄の胎仔生殖細胞で細胞死の起きかたに性差があることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Kanno,Y.,Tamura,M.,Chuma,S.,Sakurai,T.,Machida,T.and Nakatsuji,N.: "A cystatin-related gene, testatin/cresp, shows male-specific expression in germ and somatic cells from the initial stage of murine gonadal sex-differentiation."Int.J.Dev.Biol.. 43. 777-784 (1999)
• [文献書誌] 中馬新一郎,中辻憲夫: "胎仔生殖系列細胞の発生と操作"遺伝子医学. 4. 264-268 (2000)
• [文献書誌] Chuma,S.and Nakatsuji,N: "Autonomous transition into meiosis of mouse fetal germ cells in vitro and its inhibition by gp130-mediated signaling. "Devel.Biol.. 229. 468-479 (2001)
• [文献書誌] Nakatsuji, N.and Chuma,S.: "Differentiation of mouse primordial germ cells into female or male germ cells."Int.J.Dev.Biol.. (In Press). (2001)
• [文献書誌] Tamura,M.,Kanno,Y.,Chuma,S.,Wakana,S.Saito,T.,Shirayoshi,Y.and Nakatsuji,N.: "A basic helix-loop-helix transcription factor gene, nephgonadin, isolated by differential screening of the male and female fetal gonads shows a sex-and stagedependent expression pattern in the gonad development."Mech.Devel.. (In Press). (2001)