哺乳類における生殖系列-体細胞系列分岐の制御機構に関する分子遺伝学的解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11234204
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 阿部 訓也 熊本大学, 発生医学研究センター, 助教授 (40240915)
• 研究分担者: 松居 靖久 大阪府立母子保健総合医療センター研究所, 研究部長 (40241575)
• キーワード: 生殖系列 / 幹細胞 / cDNA解析 / トランスジェニックマウス / 遺伝子発現

研究概要

PGCにおけるレポーター発現を指標として様々なステージのPGCを純化・単離し、これを材料にcDNAライブラリーを作製し、計6万クローンを単離した.平成12年度は9000クローンのシングルパスシークエンシングを行なった.e11.5,13.5雌雄、計4種類のPGCライブラリーから得られた計5055配列の情報を用いてGenBank,nrデータベースに対してblastnによる相同性解析を行ったところ、既知遺伝子が36.1%,未知遺伝子が63.9%であった.ESTデータベースに対する検索では、約40%が未知のものであることが判明した.このように純化PGCライブラリーには、既存のライブラリーには含まれない未知遺伝子クローンが濃縮されており、生殖系列細胞に特徴的な遺伝子を検索するのに有効な材料と期待される.実際、192の未知遺伝子の精巣での発現をin situ hybridizationで検索したところ、約半数でシグナルが検出され、その多くは生殖細胞に特異性を示した.配列解析に加えて、PGCライブラリーから一万余のクローンのインサートをPCR増幅し、そのDNAをスポットしたcDNAアレイを作製し、各クローンの発現解析に用いている.また、PGCに特徴的なゲノム刷り込み消去のタイミングを探るため、純化したPGCのゲノムでのH19遺伝子のメチル化状態を調べ、刷り込みの消去はe12.5以前より始まるが、雌雄の細胞で消去の様式が異なることを明らかにした(Ueda,T.et al.,2000).

研究成果

• [文献書誌] Abe,K.,Yamamura,K.and Suzuki.M.: "Molecular and embryological characterization of a new transgene-induced null allele of mouse Brachyury locus."Mammalian Genome. 11,. 238-240 (2000)
• [文献書誌] Hisahara,H.,Araki,T.,Sugiyama,F., et al.: "Targeted expression of baculovirus p35 caspase inhibitor in oligodendrocytes protects mice against autoimmune-mediated demyelination."EMBO J.. 19. 341-348 (2000)
• [文献書誌] Ueda,T.,Abe,K.,Miura,A., et al.: "The paternal methylation imprint of the H19 locus is acquired in the gonocyte stage during fetal testis development."Genes to cells. 5. 649-659 (2000)
• [文献書誌] Matsui,Y.,Nagano,R.,and Obinata,M.: "Apoptosis of fetal testicular cells is regulated by both p53-dependent and independent mechanisms."Mol.Reprod.Dev.. 55. 399-405 (2000)
• [文献書誌] Toyooka,Y.,Tsunekawa,N.,Takahashi,Y.,et al.: "Expression and intracellular localization of mouse Vasa-homolog protein during germ cell development"Mech.Dev.. 93. 139-149 (2000)
• [文献書誌] Yoshimizu,T.,Obinata,M.,and Matsui,Y.: "Stage-specific tissue and cell interaction play key roles for mouse germ cell specification."Development. 128. 481-490 (2001)