細胞特異的にGFPレポーターを発現するトランスジェニックマウスを利用し、始原生殖細胞発生のさまざまな段階からPGCを単離し、それを材料に16種類のcDNAライブラリーを作製しこれまでに、18000クローンに関する配列決定を行った.本年はこれらEST配列の情報科学的解析を行い、クラスタリング手法により種別を行い、その代表に関して相同性検索を行い、各クローンに関する注釈付けを行った。これらの代表配列の内、約3000を公開されたマウスゲノム配列に対して相同性検索を行い、ゲノム配列上へのマッピングを行った。これらの結果をデータベース化するとともに、各遺伝子のゲノム上の位置、他の既知遺伝子との関係を概観するためのブラウザーを作成した。また、大規模RT-PCR解析により多数の遺伝子のPGC発生過程における発現プロファイルを調べた。クラスター解析により同様の発現パターンを持つ遺伝子群の分類を行ったところ、初期の移動期PGCにおいて高発現し、生殖隆起到達後発現が減少する遺伝子クラスター、生殖隆起到達後、新規に発現がみられる遺伝子群、その後、減数分裂が開始する頃になり、雌雄のPGCで発現が異なる遺伝子群など、いくつかのクラスターが存在することが明らかとなった.PGC cDNAライブラリー中には新規遺伝子、PGC特異的発現を示す遺伝子が多数含まれることが以上のcDNA解析から明らかとなったが、加えてゲノム配列情報も併せて解析する事が可能となった。これら遺伝子の発現制御に関しては核内ゲノム構築の高次制御も重要と考えられる。そのために、メチル化DNA結合蛋白とGFPとの融合遺伝子を作製し、未分化幹細胞に導入したところ、メチル化DNAの存在様式が未分化細胞と分化細胞では大きく異なることが認められ、このことが未分化細胞特有の遺伝子発現と関連があることが示唆された。
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