全能性細胞・始原生殖細胞を特異的にマーキングし、これらの細胞を純化単離する方法を確立し、現在までに、始原生殖細胞発生の16の段階からPGCの単離を行った.純化したPGCを材料としてcDNAライブラリーの作製を行った.これまで得られたcDNAクローンの配列解析と相同性検索の結果、約30%が未知遺伝子であり、また既知遺伝子の中にも、始原生殖細胞において特異的な発現を示すものが多く含まれていた.大規模PCR解析により多数の遺伝子のPGC発生過程における発現プロファイルを調べ、発現パターンの類似性を指標として遺伝子の分類を行い、発生段階特異的に発現の消長を示す遺伝子群、また雌雄のPGCで発現が異なる遺伝子群などを同定した.これによりPGC発現遺伝子を機能的に分類することが可能となってきた.これらの遺伝子の構造、発現制御領域の解析を目的に約2000のPGC発現遺伝子をゲノム上にマップしたところ、ES細胞やPGCに特異的に発現する遺伝子がゲノム上で近接して存在する例が複数認められた.我々が収集したEST配列を元にしてカスタムcDNAアレイを作製し、発現解析を行ったところ、PGC癸現遺伝子にはES細胞特異的な発現を示すものが数多く含まれていることが明らかとなった.これらの結果を併せて考えると、始原生殖細胞はES細胞、あるいは胚盤胞と非常によく似た発現プロファイルを持つことが明らかとなり、これらの細胞では共通した発現制御機構が働いていること、またそれらの発現は染色体ドメインレベルで制御されている可能性が示唆された.
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