研究課題/領域番号 |
11235202
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
林 茂生 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (60183092)
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研究分担者 |
永渕 昭良 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (80218023)
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キーワード | 細胞接着 / カドヘリン / 上皮細胞 / GFP / 細胞運動 / Rac / プラコグロビン / アドヘレンスジャンクション |
研究概要 |
林 茂生 今年度はGFPを用いた胚における細胞の経時観察技術を確立した。Fアクチンを染色するGFP-moesin融合蛋白をショウジョウバエ気管細胞に発現させ、コンフォーカル顕微鏡で断層像を経時的に取得することで気管細胞の三次元構造の変化を一細胞レベルで追跡することに成功した。この方法を用いて気管の融合、細胞質突起の進展状態、の詳細を観察し突然変異体(escargot及びblistered)における異常を見出した。またこの方法によりtau-GFP(微小管)、Dalpha-catenin(接着分子)の動態を観察し細胞接着分子複合体の新規の輸送現象を発見した。 この観察系を用いて低分子量G蛋白Racの機能解析を行った。Racの機能低下は上皮における細胞接着を強固にすることで細胞の再配列を阻害し、逆にRacの活性化は細胞接着を破壊した。またこれらの表現型にはカドヘリン接着分子複合体の量と局在の変化がともなっていた。これらの結果はRacの細胞接着における役割を明快に示している。 永渕昭良 本研究では多細胞体制の形作りにおいて主要な要素となる上皮組織構築機構の解明を目指している。本年度はまず分化の指標に上皮細胞に特異的に発現するサイトケラチン18、クローディン、デスモプラキンを用いることにより、F9細胞が単層培養条件下でも上皮細胞に分化し接着装置複合体を発達させた上皮構造をとれることを明らかにした。さらにこの系を用いて昨年度単離したプラコグロビン欠損F9細胞の上皮分化を見ることにより、プラコグロビンは上皮分化マーカーのmRNAレベルでの発現には影響を与えないが、デスモソーム形成に必須であることを示した。さらにデスモソームの形成異常がアドヘレンスジャンクションではなくタイトジャンクションの形成異常を引き起こすことを明らかにした。これはこれまで予想されていなかったデスモソームによるタイトジャンクションの形成制御機構の存在を示唆している。
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