研究概要 |
体色に関する遺伝子座の突然変異を容易に検出できるメダカを活用し、生殖細胞における突然変異の成立機構の解明をめざした。 1.まずメダカの色素細胞形成遺伝子座における自然突然変異率を調べ、自然突然変異率が脊椎動物において種を越えて保存されていることをはじめて明らかにした。また、ゲノムの安定性に関与する多数の遺伝子を単離・解析し、このような突然変異率が、特に雌生殖細胞では正確なDNA修復によって、雄生殖細胞では特定の分化段階でのアポトーシスによる変異細胞の排除機構によって維持されることを示唆した。一方、メダカの雌生殖細胞には、集団の生存力に対して中立的でかつトランスポゾンを介さないゲノム再編型の新しい突然変異生成機構が存在する可能性を示した。 2.更に、既に多数分離され系統維持されている色素細胞形成異常突然変異体を用いて、その原因遺伝子を突き止めることにより自然突然変異の成立機構を解析した。b, ci,及びi-3の体色形成異常自然突然変異体の原因遺伝子をポジショナルクローニング法により同定し、それぞれ数塩基〜数十塩基程度の逆位・重複・欠失が起きていることを突き止めた。メダカにおける他の自然突然変異原因遺伝子同定の研究(i, el,及びrs-3)ではトランスポゾン様の配列の挿入による報告のみであったが、本研究により欠失等による自然突然変異も同様に起こりうることが示された。同時に、体色形成に関わる3つの遺伝子が新たに単離されたこと(bとciは本研究で初めて機能が明らかになった)で、色素細胞に関する発生や進化の研究にも新たな知見を提供することが出来た。
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