研究概要 |
当研究は免疫反応に重要な役割を果たす、MHCの進化過程を明らかにするために、硬骨魚メダカのMHCクラスI領域の全塩基配列を決定することを目標としている。これまでにメダカのMHCクラスI領域、約400kbをカバーする4ヶのBACクローンを単離した。今年度はそのうち約半分をカバーしているクローン187N22の解析を行った。4塩基認識制限酵素による部分消化を用いてショットガン・ライブラリーを作成し、平均600bpの4000配列を読み、アセンブルしたところ10ヶのコンテイグが得られた。ギャップをprimer walking法により埋め、全長209kbの全塩基配列を決定した。本領域からはLMP2,LMP2-like,MECL-1,LMP7x3,ClassIAx3,TAPASIN,DAXX,BING1,KNSL2,CIZ,FLOTILLIN,TUBULINの各遺伝子が同定され、その遺伝子構成は哺乳類MHCクラスII領域に酷似していた。しかしながら、哺乳類クラスII領域に存在するクラスIIA,B遺伝子の代わりに、重複したクラスIA遺伝子が存在し、MHCの原型は、機能的に密接な関係を有するクラスIA遺伝子とその抗原提示に関わる遺伝子からなっていたことが、強く示唆された。また、近年遺伝子配置のみが報告された同じ硬骨魚類に属するフグ、ゼブラフィッシュのMHCクラスI領域と比較すると、メダカの遺伝子構成は系統的により近いフグよりゼブラフイッシュにより類似しており、この領域はフグの系統で著しい再編を経験したことが示された。さらにメダカのこの領域からは、トランスポゾン様の多種の繰り返し配列が多数検出され、コンテイグ作成の妨げになっていたことが判明した。現在、残りの約200kbをカバーするBACクローンの全塩基配列の決定を進めている。
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