研究概要 |
昨年までの研究により、南集団由来の近交系メダカHd-rRのMHCクラスI領域、約430kbの塩基配列を決定し、メダカは他の脊椎動物には見られない分散型のMHCを有すること、にもかかわらずMHC class I遺伝子とその抗原提示に直接関与するいくつかの遺伝子は連鎖を保っていることを明らかにして、MHCが機能関連、構造無関係な遺伝子が適応免疫における抗原提示という新たな機能を確立するために、共進化するための場であったとする仮説を提唱した。本年度はメダカMHCクラスI領域の多型の程度を明らかにする目的で、北日本集団由来の近交系であるHNIから、Hd-rRで決定した430kbの全域とその左右数十kbずつをカバーする、4つのBACクローン、87J22,29J11,27G09,149E20を選びその塩基配列の決定を開始した。これまでに前2クローンについては少数のギャップを除いて、塩基配列の解読を終了しており、残りのクローンについても解読が進行中である。予備的なHd-rRとの比較解析結果では、予想以上に大規模な配列の挿入、欠失が認められメダカMHC領域は極めてダイナミックに進化していることが明らかになった。また、硬骨魚との比較のために行っている、軟骨魚サメのMHCの構造解析から、補体遺伝子Bf,C4がクラスI,II遺伝子と連鎖して存在していることが明らかになった。この結果はMHCの基本構造は軟骨魚類から哺乳類まで、脊椎動物の進化の過程を通じて良く保存されており、硬骨魚類においてのみ大きく再編されていることを示しており、硬骨魚類で生じたとされるさらなる四倍体化との関係で興味が持たれる。
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