研究概要 |
1.雄特異的組み換え抑制の系統差に関する研究 メダカの性染色体は雄特異的に組み換えが抑制されている。昨年に引き続き、Hd-rR vs HNI, HNI vs SOK, Hd-rR vs SOKの近交系間のF1に加え、Hd-rRと中国一西韓集団の野生系統、Hd-rRと南日本集団の野生系統間のF1でも雄で性決定領域周辺の組み換えが抑制されていることが明らかになった。この結果は、亜種間雑種ばかりでなく同じ集団内でも雄特異的に組み換えが抑制されており、この現象がメダカという種に普遍的に起こることが確認された。 2.メダカ雄決定遺伝子の同定 Y染色体上の性決定領域のゲノム解析により、雄決定遺伝子の有力な候補が明らかになった。この遺伝子は、DM domainをもつ新規の遺伝子であった。分子系統解析から、メダカの性決定遺伝子はDMRT1を起源とすることが推定された。この解析過程で、Y染色体の一部、約250kbを欠く突然変異染色体が得られた。この染色体をもつ個体は、XYであっても雌に分化することが明らかになった。 3.野生集団由来の性決定・性分化関連遺伝子の探索 メダカの性決定遺伝子(PG17)が得られたことにより、この遺伝子の有無を指標に性決定・性分化関連遺伝子のスクリーニングが可能になった。北日本集団の野生メダカ約500個体について各個体の性とPG17の有無を調べたところ、6集団中3集団から表現型の性と雄決定遺伝子の有無が一致しない個体が見つかった。これらの個体の遺伝解析から、Y染色体上の雄決定遺伝子の突然変異体2つと、XX個体を雄に分化させる性変更遺伝子と思われる劣性の変異体1つが得られた。 この結果は、性決定機構がXX-XY型からZZ-ZW型に変化するメカニズムを示している。
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