研究概要 |
本年度は培養細胞の核を除核していない未受精卵に移植する実験を行った。移植するための核は二つの系統のトランスジェニック・メダカから採取した。1)メダカEF-1α-A遺伝子のプロモーターに緑色蛍光たんぱく質(GFP)遺伝子を結合した融合遺伝子を有するHNI系統。核移植個体では黒色素細胞とGFPの発現がマーカーとなる。2)メダカβ-アクチン遺伝子プロモーターにGFPを結合した融合遺伝子を有するヒメダカ系統。核移植個体ではGFP遺伝子の発現がマーカーとなる。これらの2系統から培養細胞を作り、それらをヒメダカ系統の未受精卵にマイクロインジェクションによって移植した。その結果,移植核の遺伝的マーカーを、ドナーのトランスジェニック個体と同じパターンで発現する、孵化個体が移植胚の0.3%の割合で得られた。長期に生存する個体は見られなかったが、魚類の培養細胞の核移植では初めての成果で将来に希望をもたせるものである。 魚類や両生類での分化した細胞や培養細胞の核移植については、移植核と卵の細胞周期が大きく異なることから困難と考えられている。培養細胞でも細胞周期は24時間であるのに対し、卵の細胞周期は30分から1時間である。この細胞周期をどのようにして調和させることが出来るかが、今後の成功の鍵になる。これらの問題を解決し、より長期にわたって生存する核移植個体を得るのが今後の課題である。
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