新規生物機能を有するメダカ系統を作成するために体細胞の核移植法の研究を行っているが、核移植個体は孵化後3週間までしか発生しない。この原因として卵核と移植核の細胞周期の不調和が考えられたので、これを解決するために次の実験を行った。 1.連続核移植:尾ひれ細胞を短期または長期間培養したものを移植に用いた。短期培養の細胞を一回移植したものでは420個の移植個体中GFPを発現した個体は胚体形成期まで発生しもの14(3%)、孵化したもの2(0.5%)であった。これに対し連続核移植をしたものでも目立った改善は見られなかった。長期培養した細胞でも結果は同様であった。 2.M期細胞の核移植:培養細胞の細胞周期を同調しないでランダムのまま移植したものと、M期に同調したものの比較を行ったが、この場合も目立った改善は見られなかった。 3.胚体形成期以後の核移植個体の染色体解析:一回核移植した14個体の中、3個体は1Nと2N、4個体は1Nと3N、7個体は1N、2N、3Nの染色体をもつ細胞から構成されていた。連続核移植した1個体は1N、2N、4Nの染色体をもつ細胞から構成されていた。このように核移植個体は正倍数性細胞のモザイクであることがわかった。 4.胞胚期核移植個体の染色体像の解析:胞胚期の染色体と培養細胞の染色体を比較すると胞胚期のものは培養細胞のものに比べ2〜3倍大きいことが明らかになった。ところが胞胚期の核移植個体では染色体数72(3倍体)で、染色体の大きさは全て大型で胚細胞のものの特徴を示した。これは培養細胞の染色体が移植によって胚型に転換することを示すもので、移植された核の初期化の一つの過程と考えられた。
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