核外移行シグナル(NES)配列は、核から細胞質へのタンパク質の輸送を規定するシグナル配列である。我々は、MAPキナーゼキナーゼ(MAPKK)にNESを見い出し、さらにサイクリンB、アクチン分子などの機能分子にNES配列を見い出してきた。さらに、どのようなタンパク質が、NESによる輸送経路によって核から細胞質へ運ばれるかを検索した。その結果、新たにTGFβシグナル伝達系の中枢のシグナル伝達分子のひとつであるSmad4にNES配列を見い出した。Smad4は、非刺激下では細胞質に存在するが、TGFβ刺激に伴い細胞質から核内に移行することが知られている。われわれは、Smad4の細胞質局在が自身のNESによって規定されていること、また、Smad4のNESが刺激に応答した特異的な不活性化を見い出し、Smad4のNESの活性がTGFβ刺激によって制御されることを示すことが出来た。さらに、NESによるSmad4の細胞質局在が、TGFβに対する適切な細胞応答に必須であることを明らかにした。NES活性の制御の分子機構ならびにSmad4の核内移行機構の解明は今後の課題である。
|