本年度は、タンパク質の核内移行を再現するin vitro核輸送系を用い、MAPキナーゼ分子の核内移行の分子機構を解析を行った。大腸菌に発現させ精製したGFP融合MAPキナーゼ(GFP-MAPK)をin vitro核輸送系に添加すると、リン酸化、非リン酸化型に関わらず5分以内に核内への集積が認められた。種々の条件下でGFP-MAPKの核内移行を検討し、(1)GFP-MAPKの核内移行に低分子量Gタンパク質Ranを必要としないこと、(2)小麦胚芽レクチンによってGFP-MAPKの核内移行が阻害されること、(3)可溶性因子がない条件下でも、GFP-MAPKが核内に入りうることを示すことが出来た。これらのことから、MAPキナーゼはimportinファミリー分子などの可溶性因子なしで核膜孔を通過することが示唆された。また、MAPキナーゼが直接核膜孔タンパク質と相互作用すると考えられたので、核膜孔タンパク質(FGリピート領域)とMAPキナーゼとの結合実験を行ない、MAPキナーゼが核膜孔タンパク質と直接結合しうることを明らかにした。これらのことから、MAPキナーゼは直接核膜孔相互作用し核内に入ることをはじめて示めすことが出来た。
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