研究概要 |
生物リズム、特に約24時間周期の概日リズムはほとんどすべての生物にみられる基本的生命現象である。最近の分子生物学的研究の成果により、哺乳類においても数種類の時計遺伝子が発見され、その発現の概日リズムはフィードバック機構として説明できる転写調節であることが明らかになってきた。すなわち、時計蛋白の概日リズム的発現は蛋白の核移行を中心とする蛋白の細胞内におけるダイナミックな動きが問題の本質である。本研究は、時計遺伝子群を用いて、時計分子の核内移行の機構を明らかにすることに重点を置き、核移行という細胞生物学上の機構解明をめざす。その上で、核移行という現象がもたらす概日リズムの生成機構(時間の決定機構)にせまろうとするものである。 時計分子の核移行機構を明らかにするために、時計蛋白群の細胞内での移動を検討した。まず、最近時計分子群の一つとしてあらたに同定された新規蛋白をタグ付きGST融合蛋白として大腸菌にて発現し、精製を試みた。蛋白発現の至適条件を決定し、細胞注入実験に必要な蛋白を精製することに成功した。さらにこれらの蛋白を培養細胞に注入することによりその核移行を検討した。蛋白の細胞質内注入後、核内への移行がみられたが、WGA,Ran-GTP,G19V Ran-GTP等との共注入実験を行った所、Ran依存性に核移行することが明らかになった。その詳細なメカニズムを解析するため、in vitro系での注入実験を進行中である。
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