研究概要 |
Cry遺伝子は光修復酵素関連から単離されてきたが、そのノックアウトマウスを用いた実験からCryは時計マシナリーの本体として働いていることが示唆された。また、培養細胞を用いた実験等から、CRYとPERとの核移行が、転写のフィードバック機構の本体を調節し、時間の決定機構となるという仮説をたて、時計分子の核移行の詳細な分子機構を検討した。CRY2には典型的な核移行シグナルNLSがカルボキシル端側に存在するが、CRY1には定型的NLSが存在しない。CRY1, CRY2をタグ付きGST融合蛋白として大腸菌にて発現、精製した蛋白をNIH3T3培養細胞に注入することによりその核移行を検討した。CRY1, CRY2蛋白の細胞質内注入後、両者とも核内への移行がみられたが、WGA, Ran-GTP, G19V Ran-GTP等との共注入実験を行った所、同じく両者ともRan依存性に核移行することが明らかになった。さらに、CRY1, CRY2をそれぞれN末側C末側に二分割したCRY1N, CRY1C, CRY2N, CRY2Cを、同様に大腸菌を用いて蛋白を発現、精製し、細胞注入した結果、いずれもN末端側蛋白は核移行を示さず、C端側は核移行を観察した。セミインタクト細胞を用いたin vitro系では、CRY1C, CRY2Cともににimportin αβを介する核移行を行っていることが示された。NLS配列をもつCRY2Cの核移行はin vitro結合実験の結果からもimportin αβを介する核移行であることを明らかにした。一方、典型的なNLS配列を持たないCRY1Cに関しては、in vitro結合実験を始め現在詳細な検討を進行中である。また、PERについては、大腸菌での蛋白発現が困難であったため、バキュロウイルスを用いて蛋白精製を試みている。
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