分裂酵母mRNA核外輸送温度感受性変異株ptr1〜8の原因遺伝子それぞれについて機能解析を開始した。特に、ptr7^+遺伝子はmRNAの核外輸送だけでなく、蛋白質の核移行にも関与する新規ATP/GTP結合蛋白質をコードしており、興味深い因子である。この因子の核/細胞質間輸送機構における機能をより詳細に解明するため、相互作用する因子の探索を行った。分裂酵母とヒトのcDNA library約7000万クローンをyeast two hybrid systemによってスクリーニングし、分裂酵母とヒトのPtr7と相互作用を示す候補クローン170個を得た。塩基配列の解析を進め、現在までに、Hsp27、EAP30(転写制御因子)、リボゾーム蛋白質S8、S24、L21などがPtr7pと相互作用する可能性のある因子として同定された。興味深いことに、S24やL21とGFPとの結合蛋白質をptr7変異株で発現させて解析した結果、機能的なPtr7pがそれらリボゾーム蛋白質の核移行に必要である可能性が示された。今後、残りのクローンの塩基配列を決定すると共に、in vitro結合実験を行って、直接的な相互作用の確認を行う。 また、mRNA核外輸送複合体の実体解明を目的として、試験管内で転写合成したmRNAとHeLa細胞核抽出液を混合して形成される複合体を動物細胞核へマイクロインジェクションし、核外に輸送されるために必要な因子の探索や複合体の解析を行う新たな実験系の確立を試みている。
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