1.分裂酵母のmRNA核外輸送温度感受性変異株ptr5とptr9の原因遺伝子をクローニングし、解析を行った。その結果、ptr5^+遺伝子がコードする蛋白質は核膜孔因子Nup85pの分裂酵母ホモログであることが示された。ptr5変異株では蛋白質の核内外輸送は正常であったことから、Ptr5pはmRNA核外輸送特異的に機能する核膜孔因子であることが示唆された。また、ptr9遺伝子は紡錘極体(SPB)形成に関与するSfilpと同一であった。ptr9変異株では、細胞形態の異常が観察されることから、細胞周期進行の制御とmRNA核外輸送機構との間に何らかの関連がある可能性が示唆された。 2.ヒトの手足形成不全を伴う遺伝性疾患split hand/split foot病の原因遺伝子DSS1の分裂酵母相同遺伝子を欠失させると、mRNAの核外輸送に異常を示すことを昨年度までに明らかにした。今回新たにdss1欠失株のマルチコピーサプレッサーとして、プロテアソームの構成因子であるPadlpを同定した。この結果から、DSS1がプロテアソームを介して機能していることが判明した。 3.蛍光標識したftz pre-mRNAをHeLa細胞核にマイクロインジェクションしたところ、蛍光pre-mRNAは核内でSC35のスペックルと共局在してスプライシングされた後に、細胞質へと核外輸送された。イントロンを含まないcDNA由来のmRNAに比較して、pre-mRNAの方が迅速に細胞質へと輸送され、スプライシング反応が核外輸送を促進することが示された。RT-PCRを用いて蛍光mRNAが細胞内で分解されていないこと、また、転写阻害によってmRNA核外輸送が阻害されること、その際輸送されなかった蛍光mRNAが核内の新規ドメインTIDRに蓄積することを明らかにした。本実験系は、唯一のmRNA核外輸送の可視化アッセイ系として今後有用であると思われる。
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