カドヘリンによる細胞間接着に起因するシグナルの核内移行機構を明らかにするため、本研究では、α-カテニン依存性のシグナル伝達とβ-カテニンの関与したシグナル伝達に分けて研究を遂行した。 〔α-カテニン依存性のシグナルと核への伝達〕 A.シグナル伝達に必要なα-カテニン上の機能領域の同定 一連の欠失を導入したα-カテニンを、カドヘリン陽性でかつα-カテニン遺伝子に変異を持つためα-カテニン陰性である細胞(DLD-1細胞)で発現させ、細胞増殖抑制に必要な機能領域を同定した。DLD-1細胞にα-カテニンを発現させても細胞の増殖には変化はみられなかったが、α-カテニンの発現によりスフィンゴシンにより誘導される細胞のアポトーシスに対する抵抗性が増大することが判明した。そこで、一連の変異α-カテニンを同細胞で発現させ、この抵抗性増大に関与する領域の同定を行った。 B.同定された領域に結合するシグナル伝達分子の同定並びにそのcDNAクローニング (状況)two-hybrid systemによるクローニングを鋭意行っているが、現在のところ目的のクローンは得られていない。 〔β-カテニンの関与したシグナルと核への伝達〕 A.β-カテニンのカドヘリンからの解離機構の解明 β-カテニンは、カドヘリンからの情報を核へと運んでいる有力候補である。しかしながら、いかなるシグナルによりβ-カテニンがカドヘリンより解離するのかは十分にはわかっていない。そこで、β-カテニンとGFPの融合タンパク質をカドヘリン陽性細胞で発現させ、カドヘリンと複合体を形成させる。次に種々の刺激を細胞に与え、いかなる刺激・条件下でβ-カテニンの解離が起こるかを明らかにする。 融合タンパク質のコンストラクトを作製し、これを安定に発現する細胞のクローンを先ずカドヘリン陰性細胞で得た。興味深いことに、この融合タンパク質は核には移行せず、β-カテニン単独で発現させた場合(核に移行)と異なる結果が得られた。
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