研究概要 |
今年度は葯特異的遺伝子SP11を中心に解析した。現在までに対立遺伝子の可能性があるクローンとして、4つの遺伝子が単離されていた。そこで、この4つの遺伝子の塩基配列からプライマーを設計し、RT-PCRにより、B.campestrisの22Sホモ系統からのSP11遺伝子の増幅を試みた。まず、4系統の葯cDNAを鋳型とした場合に、SP11のみが増幅されることを確認した。そこで、それらをクローニングし、それぞれの系統に関して3つ以上の独立したクローンの塩基配列を決定したところ、既存のSP11cDNAの塩基配列とプライマーの塩基配列と3'UTRの長さを除いて、完全に一致が見られたので、この手法によりSP11の対立遺伝子をクローニングできることを確認した。この手法を他のS遺伝子ホモ系統に応用したところ、実験に用いた18S遺伝子ホモ系統のうち、花粉側で劣性を示すS29,S60を除いて、いずれの系統でも増幅が確認された。次年度は、多型性の程度、柱頭側遺伝子との進化について調査予定である。 S9系統から単離した76kb遺伝子断片には、SLG/SRK/SP11の周辺領域に、10以上の遺伝子が存在していた。これらの周辺領域がいくつかのシロイヌナズナBACクローンと高い相同性が示されている。そこで、シロイヌナズナから同祖性遺伝子(orthologue)を単離し、この遺伝子破壊系統を作出することにより、機能解析を計画した。今年度は、そのBACクローン上に存在しているSP1-SP10に対応する遺伝子のクローニングを行った。このうちの5つの遺伝子について、BACクローンとゲノムDNAで行ったSouthern解析のバンドの位置が一致したので、このBACクローン上に存在しているものが、確かにゲノム中にあることを確認した。今後は、これらの5つの遺伝子に関してクローニングを行い、その塩基配列をもとにT-DNAタグラインから遺伝子破壊系統をスクリーニングし、機能解析を進める。
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