S複合遺伝子座の構造と葯発現遺伝子のS特異性の解析

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11238202
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 西尾 剛 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (30301039)
• 研究分担者: 鳥山 欽哉 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20183882)
• キーワード: 自家不和合性 / アブラナ科野菜 / 生殖 / 自己・非自己認識 / 花粉 / 柱頭 / S遺伝子 / 進化

研究概要

昨年開発したSP11のドットブロット分析によるSハプロタイプ同定法の利用を図るため、Brassica oleracea, Brassica rapaで塩基配列未決定のSP11遺伝子を新たに11種類決定した。その中に、この2種間でSP11が極めて類似するSハプロタイプを新たに5種類見出し、2種間でSP11が類似するSハプロタイプは合計10種類となった。
SRK, SP11遺伝子が2種間で極めて類似するSハプロタイプの対が同じ認識特異性を有するかどうかを調べるため、種間雑種を用いた方法、形質転換体作成による方法、及び合成SP11タンパク質を用いた認識特異性の検定を行い、5対が同じ認識特異性を持つことを示した。このことから、これらの対は、5種の分化前は同一のSハプロタイプであり、その認識特異性が現在まで変わらず維持されてきたと考えられた。
種分化前は同一のSハプロタイプであったと推定されるB.rapaとB.oleraceaのSハプロタイプの3対についてS遺伝子座のゲノム構造を詳細に解析し、B.oleraceaのS遺伝子座がB.rapaのものより一般に大きい原因は、種分化時あるいは分化後にB.oleraceaのS遺伝子座にレトロトランスポゾンが多数挿入されたことが原因であることを示した。
劣性グループのSハプロタイプであるB.rapaのS^<60>のSP11、SRK及びSLG含む約100kbのコンティグを得、86.4kbの塩基配列を決定し、そこに座乗する遺伝子を明らかにした。花粉の自己認識特異性を決定するSP11の近傍に、長いORFを持たない新たな遺伝子を見出した。
自家和合性をもたらすmod遺伝子を明らかにするため、MOD遺伝子に密に連鎖したアクアポリン遺伝子(MLM)から染色体歩行を行い、MLM遺伝子の近傍のコンティグを作成し、そのゲノム領域において強く発現している遺伝子を多数明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Sato Y, Fujimoto R, Toriyama K, Nishio T: "Commonality of self-recognition specificity of S haplotypes between Bracssica oleracea and Brassica rapa"Plant Mol.Biol. (In press). (2003)
• [文献書誌] Fujimoto R, Nishio T: "Identification of S haplotypes in Brassica by dot blot analysis of SP11 alleles"Theor Appl Genet. (In press). (2003)
• [文献書誌] Inaba R, Nishio T: "Phylogenetic analysis of Brassiceae based on the nucleotide sequences of the S-locus related gene, SLR1"Theor Appl Genet. 105. 1159-1165 (2002)
• [文献書誌] Sato K, Nishlo T, Kimura R, Kusaba M, Suzuki T, Hatakeyama K, Ockendon DJ, Satta Y: "Coevolution of the S-locus genes SRK, SLG, and SP11/SCR in Brassica oleracea and B.rapa"Genetics. 162. 931-940 (2002)
• [文献書誌] Sato K, Nishlo T: "Efficient detection of DNA polymorphism in cabbage and rice cultivars by PCR-RF-SSCP (PRS)"Plant Cell Rep. 21. 276-281 (2002)
• [文献書誌] Matsushita Y, Suzuki T.Mori M, Shimosato H, Kuota R, Watanabe M, Kayano T, Nishio T, Nyunoya H: "Isolation of a cDNA for a nucleoside-diphosphate kinase capable of phosphorylating the kinase domain of the self-incompatibility factor SRK of Brassica campestris"J.Exp.Bot.. 53. 765-767 (2002)