研究概要 |
ヒト染色体不安定性症候群ATの原因遺伝子ATMと類似の構造を持つ分裂酵母rad3+およびtell+は、染色体テロメアの維持において重複した機能を持つことをすでに報告している。Rad3タンパク質は細胞周期チェックポイント制御において重要な機能を持ち、その機能はCds1,Chk1という二つのプロテインキナーゼの活性化を介していることが示されている。本研究では、Rad3タンパク質の多面的機能の理解のため、rad3+遺伝子の温度感受性変異を網羅的に検索した。そのうちの一つ、rad3-h4変異株は制限温度においてもチェックポイント機能は正常である一方で、弱いDNA損傷感受性を示した。このことは、Rad3タンパク質が細胞周期停止以外にもDNA修復の過程に直接的に関与している可能性を示している。この変異株に於いては、制限温度に移行後テロメアDNAの経時的な短縮が観察された。このことは、チェックポイント以外のRad3機能がテロメア長の維持に関与していることを示している。rad3-h4変異株では、テロメア長の長さが短縮するだけでなく、許容温度においてもテロメア近傍での遺伝子発現の抑制が部分的に解除されていた。このことは、rad3の欠損によりテロメア近傍のDNA構造が変化していることを示しており、ATM関連因子がテロメア近傍のDNA高次構造、あるいはヘテロクロマチン化を直接的に制御している可能性がある。
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