研究概要 |
テロメアは真核生物線状染色体の末端を構成するDNA・タンパク質複合体である。テロメア構造の維持が染色体の正常な機能にとって必須であることがすでに報告されている。我々はは分裂酵母を材料に、テロメアDNAの維持機構の解析を行っている。 これまでにATM関連遺伝子rad3とtel1の二重欠損株においてテロメア長が極端に短くなり、細胞増殖能が低下することを報告している。本年度、rad3のテロメア特異的変異rad3-h4を有する株の解析を行い、1,ATM関連因子のテロメア維持機能と細胞周期チェックポイント制御機能は独立であること、2.rad3 tel1株に見られる株の生存率の低下は両機能が同時に失われたときにのみ観察されること、を見いだした。一方、テロメア複製の生化学的解析を進め、分裂酵母テロメアDNA末端の一本鎖部分は細胞周期(おそらくS期)特異的に3'末端の一本鎖が出現することを明らかにした。また、分裂酵母の新規遺伝子rad50の破壊株は、テロメアの長さの制御や、テロメアサイレンシングには関係ないが、野生型に比べて一本鎖部分突出が多いことから、Rad50はテロメアDNA末端の一本鎖部分の調節に関係している可能性が示唆された。 分裂酵母ではテロメア機能の欠損をバイパスする機構として染色体の環状化が知られている。テロメアを持たない環状染色体保持株は、DNA損傷に対して超感受性を示し、これが相同組み換え系を介したゲノム修復の結果として生じる異常染色体によることを示唆した。このことは、ゲノム構造の複雑化と染色体の線状性との間に関係がある可能性を示している。
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