研究課題/領域番号 |
11239205
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研究種目 |
特定領域研究(B)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
白髭 克彦 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (90273854)
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研究分担者 |
小布施 力史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (00273855)
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キーワード | ヌクレオソーム / 染色体構築 / 染色体複製 / 時間的制御 / マルチレプリコン / 細胞周期チェックポイント / RAD53 / 複製開始点 |
研究概要 |
真核生物染色体は多数の複製開始点より構成されるマルチレプリコン構造をとっており、それぞれの複製開始点はS期の異なる時期に秩序正しく複製を開始する。我々は出芽酵母の第六染色体を用い、かかる制御機構について解析してきた結果、複製開始の時間的制御機構が染色体を様々な傷害から守るために機能するDNA傷害、複製チェックポイント制御機構と密接に連携することを明らかにしている。この発見からチェックポイントキナーゼであるRAD53と複製開始点結合蛋白であるORC2が共に複製開始点の開始の順番を決定する時間的な制御因子として明らかにされたが、その分子的作用機序については今後の課題となった。今年度は1)S期初期に複製を開始する開始点、および後期に複製を開始する開始点についてその構造上の違い、特に染色体上でのヌクレオソーム構造の違いを明らかにすること、および2)RAD53キナーゼ自身のリン酸化が複製進行調節に於いて担っている役割を具体的に明らかにすること。の2点に絞って解析を行った。 課題1)の成果;野生株中での初期及び後期開始点を含むそれぞれ5kbの領域でのヌクレオソームの配置をマイクロコッカルヌクレアーゼに対する感受性部位を指標に明らかにしたところ、ヌクレオソームの配置からは初期、および後期開始点それぞれの特異性は明らかに出来なかった。一方、我々はorc2-1株では初期、後期開始点が同時に複製を開始してしまい、さらには、マイクロアレイによる解析の結果、通常は制御されている開始点周辺(2-5kbの領域)の転写ユニットの活性が上昇してしまうことが明らかにしている。そこで、orc2-1株についても同様の解析を行った所、ヌクレオソームの配置そのものでは野生株と差異を見出せなかったが、変異株中では初期開始点を含む2kbにわたる領域のヌクレアーゼに対する感受性が変化していることが明らかとなった。このことは、orc2-1株中では所期開始点の染色体高次構造に変化が生じ、結果として、初期開始点特異的な高次構造が失われてしまった可能性を示唆している。現在、ヌクレオサーム構造の折り畳みにより作り出されるさらに上位のクロマチン高次構造の解析法を開発中である。 課題2)の成果;RAD53蛋白にHAタグを付加することで蛋白の検出系を構築し、さらにはRAD53自身のリン酸化を検出する系を確立した。今後は大量培養系よりRAD53のリン酸化フォームを精製し、リン酸化部位を決定、その情報を元にリン酸化部位の変異をRAD53に導入し、リン酸化そのものの機能、さらには遺伝学によるRAD53の標的因子の同定を行おうと考えている。
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